【 vol.87】心温まるお話


ろうそく

石川県志賀町(旧富来町)酒見の富来、当時中学校1年生、奥下雅士君は足が不自由な近所の年配女性を気遣い、春ごろから代わりにごみ出しを続けている。

奥下君は月曜と木曜の週2回、燃えるごみ収集の日、川口菊子さん(76歳)宅に向かう。家から緩やかな坂を上って100メートルほど。「僕の足でダッシュすれば10秒」。午前6時半に起き、顔を洗うより先に走る。

きっかけは、ある雨の日に見た光景だった。川口さんが右手に傘、左手にごみ袋を持ち、足を引きずりながらごみを出す姿を見て、決心した。祖母治美さん、父建一さん、母春美さんも最初気付かずに「朝早くどこへ行くのかな」 と見ていたという。

川口さんは、10円のくじ引きやラムネやガムなど10円、20円の菓子が並ぶ駄菓子屋さんを営む。屋号の 「利平(りへい)」 から 「でへのおばちゃん」 と親しまれ、近所の子のたまり場。川口さんは 「子供たちと話をするだけが楽しみ」 と日々を過ごす。手紙も届き 「宝物です」 と大事にしまってある。

奥下君も幼い時から通う1人だ。川口さんは 「まあちんに小遣いあげようといっても 『ぼく、それが欲しくて、しとるんじゃないげん』 と言う。そんなまあちんが好きで。いつも心の中で手を合わせています」 という。

川口さんは奥下君のために、水気を含む生ごみを減らそうとする。それを聞いて奥下君が言う。「大丈夫、大丈夫。重くても平気だから」「年も年だし、もう2年で店おこう (やめよう) かと思っている。いつかまあちんのお嫁さん見られたらいいな」。この時、まあちんは照れたように笑うばかりだ。