【 vol.16 】「ノー」 はありません。


お健やかに新年をお迎えのことと存じます。
昨今は、やさしさ、思いやり、謙虚さが薄れ、暮らしにくい世の中です。

20080108今月は、ホテルマンとして お客様への気遣いに徹してこられた加藤 健二さんのお話を お聞き下さい。

加藤さんは、東京・永田町のキャピトル東急(旧東京ヒルトン)へ、昭和四十年 部屋を掃除するハウスマンとして入社。

配属されて二日目、お客様から洗濯の依頼を受けた加藤さんは、先ずお客様の名前を覚えた上で部屋へ行き、「グッドモーニング・ミスターホーマン」と声をかけたところ、とても驚き感激したホーマンは「君の名は?」と握手を求めてきた。

以来ホーマンは来日の際、どんな用もホテルを通さず 直接加藤さん宛にくれ、四十年来のお客様となった。

加藤さんは毎朝三時半に起床、四時四十三分に家を出る。
五時三分の始発電車に乗り 五時五十分に出社。(勤務開始時間の一時間以上前)
まっ暗な事務所に明りをつけて、二百余名のお客様の名前、部屋番号、勤務先、愛車などを、一時間以上かけて手書きで写す。
お客様を見送った後の、スタッフの朝食の時間も、何かご用はないか、快適に過ごされているかどうかと ロビー内をクルクル回り、一日二万歩近く歩いた。

加藤さんはお客様の要望に「ノー」と言わない。
普通、買った航空チケットの変更は利かないが、「航空チケットを買ったが、急に予定が変更になった。何とかならないか」の相談を受け、航空会社の知人と交渉し、成立。「君は手品師?」とお客様は驚いて聞いたそうです。

他にも「今日歌舞伎を見たい、チケットを頼む」「京都へ行くからホテルと新幹線を予約してほしい」………に対して、「すべて私にお任せ下さい」と即答する。

お客様の依頼を厄介な仕事と思わず、無理をしてでも努力するから信頼される。そのために劇場の支配人、旅行代理店、航空会社の知人とのお付き合いを大切にし無理を頼める関係を築いた。

一万人以上のお客様の顔と名前を覚えた加藤さん。その根本にあったのは「またいらしていただきたい」「またお会いしたい」という一つの思いだった。

月に三日しか帰宅しない過剰な仕事ぶりが災いし、三十代半ばで腎臓を病み、四十歳で弟から臓器移植を受けた。キャピトル東急ホテル、エグゼクティブコンシェルジェの加藤さんは、昨年四十二年にわたるホテルマン生活に終止符を打った。

現在は、臓器移植ドナーの参加を呼びかけるため 全国を奔走している。加藤さんの今の思いは、「患者の皆さんを、何としても助けたい………………」。

誰かを喜ばせることができた時、加藤さんの苦労は報われ、感動がひたひたと 体中に満ちてくるのだと思います。加藤さんを突き動かす力がいつも、誰かの役に立つことに発揮される。

私は加藤さんを何と美しい人かと思いました。誰かを喜ばせる人の渦が 日本中に巻くといいですね。

今年もお客様に喜んでいただける努力をいたします。あなた様との縁(えにし)を絆(きずな)に変えていただけたら幸せです。今年のあなた様の健康とご多幸をお祈りします。来月またお目にかかります。
(参考文献…致知)

中谷