【 vol.22 】不幸を幸せに変えた口筆日本画家


皆様、猛暑に備え夏バテ対策していらっしゃいますか。
いつもご愛顧いただきましてありがとうございます。

20080701_1今月は、師の教えを胸に日本画の世界に生きる「南正文」さんを、ご紹介させていただきます。

口筆日本画家、南正文さんが両親の営む製材所の機械に挟まれ、肩の付け根から両腕を切断したのは小学三年生の時のこと。九時間に及ぶ大手術を受け、二週間生死の境をさまよった。一年後退院。

友達に「手なしロボット」と言われ、悔しさ悲しさ手がない現実を痛感。絶望の日々。何度も自殺を考え、足で包丁を持ち、喉に突き刺そうとしたこともある。

高学年になるとトイレの問題が深刻で授業中は地団駄を踏んで我慢し、学校が終わると自宅まで一目散。子どもなりの知恵で、あまり食べない飲まないようにした。

不憫に思った近所の女性から「口で絵や書を描き、人々の幸せのために尽くす腕のない尼僧が「京都にいる」と、聞いた。この尼僧こそ「日本のヘレンケラー」と言われた「大石順教尼」で、南正文さんの人生の師となった人。

順教尼は十七歳の時、養父に両腕を切り落とされるという凄惨な体験をしている。しかしそういう境遇を嘆くことなく、口で筆を執って書を書くなど、自立の道を歩み、結婚、出産、さらに出家という道を辿っている。

順教尼が七十八歳の時、南さんは十四歳で弟子入りし、月四回、一人で京都へ通い、絵や書の指導を受けた。堺から京都まで五回乗り換え、片道三時間の道程。

自分で切符が買えないため、ポケットの中のお金で切符を買ってほしいと頼むと、気持悪いと逃げる人、怒る人、買ってくれる人、次の駅まで付き添ってくれる人と様々。

それを聞いた順教尼は「切符を買ってくれた人くれなかった人、皆あんたの先生だ。世の中にはいろいろな人がいるということを、神仏が教えてくれているのだよ」と。順教尼は人の見えない心を大事にされ、見ていないからといって勝手な振舞をすれば烈火の如く叱る。

「習慣は第二の天性」 「心の障害者にならぬよう」と繰り返す。食事、掃除、洗濯まで、自分でこなす順教尼の一挙手一投足から実に多くの工夫と努力を学んだ。一番大変だったボタン掛けも血のにじむような努力と工夫の末、成功。

順教尼からは「やらないのとできないのは違う」と教わった。今では知恵と工夫で、口筆画、炊事、洗濯、掃除、アイロン掛け、自転車、スキー、水泳をこなすまでに。

順教尼に「人のできない生き方、人の描けない絵を描きなさい」と教わった南さん。「絵は明るくて綺麗でなければ。」というこだわりを持ち、人々に夢や希望を与えられる作品創りに日々励んでおられます。

又、開発途上国での学校建設支援の活動、講演にも活躍中です。両手が無いことをマイナスにせず、心の持ち方一つで不幸を幸せにしてこられた、順教尼と南さんに、何が大切かを教えていただきました。
今夏も暑くなりそうです。くれぐれもご自愛下さいませ。

(参考文献…致知)
中谷